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社会的サービス

はじめに

公的介護サービスには大きく介護保険制度と障害者総合支援法があります。

社会保険制度に詳しくないと、自動的に介護保険を利用すると思うかもしれませんが、そうではありません。また、どちらかを自由に選択できるのではなく、どちらを使用するのかは基本的に決まっています。

介護保険は65歳以上の要介護または要支援の高齢者と40歳以上の特定疾病(脳卒中やリウマチなど)の方が対象となります。ここに当てはまらない64歳以下の特定疾患に当てはまらない人はすべて介護保険の対象外となり、障害者総合支援法で対応することになります。

40歳から64歳の脊髄損傷の方が介護保険を利用する場合は、疾患名に脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症を記載して介護保険を利用するしているケースが多いかと思います。

多くの方は、64歳以下の脊髄損傷の方が介護保険を使用できないのは大変なのではないかと考えてしまいがちですが、障害者総合支援法も充実しておりますので、どちらの制度を利用した方が良いかということは、一概には言えません。介護保険と障害者総合支援法を選択できるような場合がありますし、制度が複雑で分かりにくいので、ソーシャルワーカーと相談しながら慎重に判断してください。

なお一般的ではないですが、介護保険制度を利用しながら障害者総合支援法も上乗せサービスとして利用することは可能です。ただ、ほとんどのケアマネージャーにその経験がないため、また、自治体の介護保険課と障害福祉課と課をまたぐため、経験のある支援スタッフがいない限り、交渉に苦労します。

簡単にですが、介護保険と総合支援法の差をお伝えします。詳細な制度設計は皆さまで検索して調べてください。

介護保険では福祉用具の低額でのレンタルや1割購入が可能、住宅改修費がある、入所や通所サービスも多いというメリットがあります。しかし、使用できるサービスの上限が決まっていたり、リハビリの回数制限があったりなどデメリットがあります。

障害者総合支援法は自治体によっては24時間の介助サービスを受けることが可能、プライベートで外出したいときに移動支援が使用できる、見守りサービスがある、就労支援があるなどのメリットがあります。一方で、利用できる通所・入所施設が少ない、日常生活用具がレンタルはできず購入になるというデメリットがあります。

最も大きな差は何かというと、1つは利用負担額だと思います。総合支援法は障害手帳をお持ちで障害年金や労災年金の生活している方は、前年度の収入にもよりますが、ほとんどの方が無料です。介護保険の方は所得や年金額に応じた負担額があります。

もう1つは地域格差です。総合支援法は自治体によって受けられる介助量が大きく変わります。これが原因で財政的に困窮していない福祉が充実している自治体へ生活を移す方が少なからずいらっしゃいます。


【障害者総合支援法】
まず、介護サービスを受けたいという時は、お住まいの自治体の障害福祉課で区分認定(介護保険の介護認定のようなもの)を受けます。区分1〜6まであり、6が最も重いです。

区分認定の申請から認定、相談計画、サービス提供までは3ヵ月以上かかることも多いので、自宅に帰ることが決まってから始めるのではなく、区分認定が受けられる半年以上(もっと短期の場合もあり)が経過したらすぐに区分認定の申請を自治体にしましょう。

自治体の窓口では、「すぐに家に帰るのか」と質問されると思いますので、もう少し先だっとしても「家に帰ります」と伝えてください。自治体の担当者の多くは、自宅に帰る直近しか対応しないことが頻繁に見受けられ、押し問答になることも少なくありませんのでご注意ください。

障害福祉サービスは複雑で分かりにくいため、独自で冊子を作成していることがあります。冊子を下さいと言わないと、渡してくれない、または渡すのを忘れていることもあるので、必ずあるか確認しましょう。それを見れば、この続きを読む必要はないかもしれません

総合支援法で知っておきたい内容は4つです。

@介護サービスの時間について
A移動支援について
B就労支援について
C日常生活用具と補装具について

@介護サービスの時間について
介護サービスを決めるのは、ほとんどの人は相談支援事業所という介護サービスについてマネジメントしてくれる相談員と決めていきます。相談支援事業所というのは、各自治体に最低で1事業所ありますので、自治体のホームページや担当者に聞いて調べましょう。それでも分からないようでしたら、検索でお住まいの市町村名と基幹相談センターで検索してください。基幹相談センターというのは、困ったときの相談窓口です。

相談員が決まったら、どのような介護サービスを希望するか決めていきます。

病院や施設のように「7時に起床、8時にご飯、9時からトイレ、10時に入浴、12時にご飯」などと決めなくても良いです。あなたの希望する生活スタイルを訴えてください。

総合支援法は理念として本人や家族がどのような生活を希望しているのか、どのような課題やニーズがあるのかを丹念に聴取して、現実的な案を決めていくようになっています。

たまに横柄な相談員がいて、本人や家族の意向も聞かずに、病院の生活を丸ごと自宅へ取り入れようとすることがあります。要注意です!

また、同居の家族が仕事や買い物や趣味活動などで家を空ける必要があるとします。そうすると本人1人の時間ができるとします。 「特に介助を依頼することもないのだが、本人も家族も不安だ。」

このような場合にも介護度が高い(区分4以上)人は総合支援法において見守りサービスがあるのです。見守りサービスといっても、何か必要があれば介護や介助をしてくれます。

では夜間は?
大都市でない限り、夜間の介護サービスは存在しません。頸髄損傷の方ではC3の人工呼吸器の方や独り暮らしの介護度が高い方以外は定期の介護サービスは絶対的に必要ではないのでご安心ください。ただ、何かあると大変なので、私はナースコールのような機器を購入して対応することをお勧めします。

介護度が高くても自治体によっては介護サービスを十分に支給してくれないことも良くあります。この支給決定のプロセスは、まず区分ごとに国庫基準負担額というのがあり、国が負担してくれる一応の上限を決めております。

多くの自治体は国庫基準負担額を超えることに強い抵抗を感じているようです。管轄の厚生労働省は支給決定においては国庫基準負担額による制限ではなく、その人の必要に応じて支給決定をしなさいという通達を何年も連続で出していますが、自治体は聞く耳を持っておりません。



相談員と自治体の窓口担当者と誠意ある交渉を粘り強くしていけば、納得できる程度の支給時間をもらえることもあります。 私が担当した人口10万人規模の小さな自治体では重度訪問介護が初で、かつ1日24時間の支給決定をしてくれました(夜間サービスがないのに‥)。なお、非常に熱心な相談員さんであり、自治体でした。

長くなりましたが、相談支援事業所の相談員に依存せず、障害福祉サービスについて本人も家族も知識を得て、自分が納得出る介護サービスの支給決定がでるように戦略的に対応しましょう。

自立生活センターの中にはこのような交渉を手伝ってくれる団体もあります。

近年は社会保障費の削減の流れがさらに強まってきております。

私も地域の生活を支援する専門職として、重度の障がいのある方が地域で自律した生活を継続していくことは簡単ではないと認識しております。

それでも、われわれは地域での生活にこだわり支援をしておりますので、ご興味のある方は、当法人のページをご覧になるか、下記にご相談ください。

info@reh-village.jp

A移動支援
趣味や余暇活動を外出で楽しみたい場合、移動支援という制度が利用できます。相談計画でプランの中に組み込まれて、自治体から移動支援の給付を受ける必要があります。相談員へ相談してください。なお、仕事には使用できないルールになっています。

B就労支援
就労移行支援事業所といって、復職に際し相談に乗ってくれたり、実際に職業訓練を実施してくれます。詳しくは仕事の項目を参考にしてください。

C日常生活用具と補装具
日常生活用具と補装具の違いは体に適合する必要性があるかないかです。補装具というのは体の機能の一部を補うものと定義されます。よって、車いすや杖などが補装具になります。補装具は一般的に医師の意見書が必要になり、日常生活用具のほとんどは医師の意見書を必要としません。

日常生活用具は電動ベッドや褥瘡予防マットレス、移乗用具や入浴用具、IT入力支援機器などの購入の補助をしてくれます。自治体が設定する上限額があり、その額を超えると、超えた分の額が実費になり、上限額以下は1割負担になります。

例えば、電動ベッドの補助額が20万、電動ベッドの価格は30万円だとします。まず、差額の10万円は自費です。そして、補助額の1割負担なので2万円が補助の実費分です。よって、最終的な支払額は10万+2万で12万ということになります。

ただし、前年度の所得がかなり多い場合は、補助が使用できませんのでご注意ください。 お住まいの自治体のウェブサイトを確認してください。


<2016.1現在>