病院を選ぶ
病院を選ぶ
頸髄損傷となったほとんどの方は救急医療として整形外科や脳神経外科での入院となり、これに関しては緊急性を要するため、自分で選択することはできないと思います。手術や保存的治療などが落ち着いた後、さあ次はリハビリとなったときに病院選びが始まります。
ほとんどの方の転院調整はソーシャルワーカーという病院の窓口対応をしてくれるスタッフや主治医が行います。このこと自体は至極当然のことです。いきなり、病院のスタッフから病院選びをしろと言われても、困難だからです。患者さんもご家族さんも通常はありがたいと思うでしょう。
しかし、ここで注意すべきポイントがあります。
どの病院に転院するか?
一般的には急性期総合病院や大学病院は関連病院を紹介することが多いです。これは、入退院の権限を持っている医師が転院する病院の内情を知っており、どの程度の医療が提供できるのかを予想できるからです。
頸髄損傷や脊髄損傷の治療やリハビリは特殊性が高いため、どこの病院でも転院が可能ということではありません。頸髄損傷・脊髄損傷のリハビリは私の知っている範囲ではありますが、北海道、関東、東海、関西、中国、九州は有名なリハビリ病院がありますので、近隣の地域の方は、そこに転院することが一般的でしょう。
東北、北信越、北陸、四国では10人以下であれば施設はあるようですが、数十人規模で実施している施設は聞いたことがありません(もし、知っている方がありましたら、ご連絡下さい)。
頸髄損傷・脊髄損傷のリハビリを常時20人以上で実施している病院は、それなりの経験値がありますので、一定レベルのリハビリの質は担保されるかと思います。
しかし、頚損・脊損の年間の入院患者総数が10人以下で、セラピスト1人が1年間で担当する頚損・脊損の方の数が1〜2人程度では、リハビリの質に一考の余地があります。そのような場合は、転院先をご家族の目で確認して、しっかりと情報収集をする必要があります。
いつ転院するか?
麻痺域に感覚がない方はできるだけ早く転院の手続きをしてください。急性期の病院は褥瘡(床ずれ)の対応が不十分で、簡単に褥瘡ができてしまうことが多くあります。もし、頸髄損傷専門のリハビリに褥瘡ができて入院となると、褥瘡の治癒が最優先課題となり、「動き」の訓練は一切禁止です。最悪の場合は車いすにものらず、治癒するまでふわふわで動きにくいエアマットで寝たままです。つまり、リハビリ病院に転院してもリハビリが進みません。
また、急性期病院におけるリハビリは質も量も不十分なことが多いです。急性期病院のリハビリスタッフの多くがどのようなリハビリをしていいか分からず、関節を他動的に動かす訓練とベッド上で頭を起こす訓練しか実施しません。長期間、寝たままで動かないでいる人の中に、痙縮(けいしゅく)といって筋の緊張の異常な反応も高まります。これは将来、身体機能の向上を妨げる、かなり厄介な問題を引き起こします。受傷早期から適切な支援を受けた人と、受けられなかった人の差は大きいのです。
頚椎の安定性が確保され、全身状態が落ち着いたら、主治医にリハビリができる病院へ転院したいと自分から申し出ましょう。救急病院の丁寧な対応に愛着を感じて、少しくらい長く入院していてもいいやと思うかもしれませんが、それは忘れて次の一歩を踏み出しましょう。
ただ、早く転院しすぎても、実際にはリハビリ病院側は色々とあるのですが・・・。
C4レベルの方への偏見
C4と呼ばれる肩が少し動いても基本的には首から上しか動かない方は人工呼吸器が外れると、整形外科や脳神経外科の主治医からは「リハビリしても良くならないから、自宅に帰るか療養型病院に転院するか、施設に入所しなさい」と言われることがあるようです。私は、リハビリして麻痺の部分の回復が困難だとしても、自助具や福祉用具・福祉機器を用いることにより自分でできることは無限に増えます。仕事も可能です。このような方は例え県外、圏外でも脊髄損傷の実績がある病院や施設でのリハビリを受けることを勧めます。
(2016.1現在)