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性活動

障がいをもっている方の性について語ることは長年,タブー視されていましたが,近年は徐々にオープンになってきました。

ホワイトハンズという性活動を支援する団体もありますし,セックスボランティアというフレーズもメディアで取り上げられています。また,障がい当事者と作業療法士が共著で性活動の本が出版されていもいます。

しかし、まだまだ情報が十分に公開されているとは言えない状況です。特に脊髄損傷者には性活動に関する障がい特有の課題があり情報がまとまっていませんので、ここにまとめてみます。

@勃起障害
A射精困難
B褥創
C失禁
D体位
E血圧
F満足度
G子作りと子育て
H相手

@勃起障害
完全麻痺の方のほとんどに勃起障害があります。勃起障害といっても,勃起には性器に直接刺激をしたときなどに現れる反射性(意識せずに,コントロールできないで勝手に勃起する)の勃起と情動性の勃起(性的勃起)があります。

反射性の勃起は持続性に欠け数分以内にやわらかくなります。看護師さんの陰部洗浄の時に勃起したりするのは,これに当たります。情動性の勃起は持続性があり,裸を見たり,触ったりという五感によって生じます。情動性の勃起が一定まで上昇することでオーガズムと射精に至るのです。

勃起障害があると,女性との合体ができず,お互いに不完全燃焼や不満足感に至ることがあります。

勃起障害に対しては,薬物療法があります。私は医師ではないので,医師が伝える内容を記載するのはセラピストとしての範疇を超えてしまうため記載は控えたいと思います。専門の泌尿器の医師に相談してください。ただ,どの泌尿器の医師でも頚損・脊損の勃起障害に対して対応ができるというわけではありません。

薬物療法以外では,大人のおもちゃを活用することもあるようです。

A 射精困難
頚損・脊損では勃起障害があるために射精の困難もあります。不全損傷の方では詳細なデータは知りませんが,射精ができる方も相当いるようです。

そもそも,頸損・脊損では,定期的な射精がないことと,股周囲が動く頻度が少ないため睾丸の温度がやや高くなることで,精子の数と質が低下することがあると報告されています。これは専門の泌尿器の医師にご相談ください。

射精困難では強制的に射精させる手段があります。子作りのための射精であれば,外科的に精子を取り出すことも可能です。まず,射精自体が性行為のためなのか,子作りのためなのかで医療機関の対応が変化するでしょう。

B 褥瘡
性行為では女性上位になることが多いです。よって,お尻にかかる圧が女性の体重分増加します。しかも,前後上下に動くため,褥瘡ができる可能性が高くなります。

注意すべき動きは上下より,前後です。上下は臀部の圧の変化が一時的に強くなっても長くは続かないので,よっぽど頑張らなければ大丈夫ですが,前後は“ずれ”の力が加わるため褥瘡ができやすいので注意が必要です。臀部に摩擦を軽減してくれるスライディングシートを引くのが最善ですが,準備しているとムードが落ち着いてしまいますし,勃起がゆるむことも考えられます。

C 失禁
失便と尿失禁があります。便がたまった状態で,また便のコントロールができていない状態で性行為があると,便失禁する可能性が高まります。性行為するタイミングは便がしっかり出た日かその翌日が良いでしょう。また,尿失禁は直前に導尿をすることで回避できます。

なお,留置カテーテルの方は挿入が困難ですので,一時的に抜去してください。その際には,医師や看護師に留置カテーテルを一時的に抜去していいか,また,留置カテーテルを挿入する方法をしっかりと指導してもらって下さい。

D 体位
体位はベッド上での女性上位と車いす上での女性上位が一般的です。四つ這いがとれそうな不全の頚損・脊損の方はバックも可能の場合があったり,対麻痺の方は手を活用すれば環境次第で正常位も可能です。

E 血圧
性行為では血圧が乱高下します。起立性低血圧のある方は,昇圧剤を服用している方もいらっしゃいますし,勃起障害に対する薬物療法で血圧が高くなっていることも考えられます。

若年の方は先天性の動脈瘤でもない限り,血圧は問題ないと思いますが,中年以降の方は,服薬量と興奮状態で血圧が上がりますので,医師に相談する必要があると思います。

F 満足度
あるデータでは性行為の満足度が病前と同様であった人は約10%という報告があります。これは頚損・脊損が勃起・射精障害、運動機能障害による動きの制限、感覚障害による性的感覚の低下、失禁など障害が多岐にわたるからでしょう。

満足度と言っても、あなたの満足度と相手の満足度があります。相手の満足度は相手の好みによって変わりますが,単純に挿入時間と激しさによるものではありません。

もし,自身が愛情を持って前戯を楽しむのであれば,挿入の量と質を別にしても相手の満足度は高まるものです。くれぐれも作為的な風俗ビデオを参考にしすぎないでください。 この点は書籍として「スローセックスのすすめ」などを読むと参考になると思います。あなたの満足度は,以前に性行為の経験があるなら,どうしても以前との比較になってしまいます。男性は性器の感じ方と相手の感じ方によって,満足度が変わるようです。

よって,性器の感覚がない場合は,自分の満足度が低下することがあります。今までとは違った楽しみを見出していくことが必要かもしれません。

G子作りと子育て
女性に関してはせきずい基金の「わたしもママになる」という雑誌が刊行されているため、こちらを参考にしてください。男性は射精がしっかりできるか、精子の数と運動性が十分かということがポイントになります。詳しくは専門の泌尿器科の医師に相談してください。泌尿器科の医師がわからないという方は、脊髄損傷専門の医療機関に受診すると、専門の泌尿器科医師は在籍していますので、こちらの受診をお勧めします。

H相手
 恋人や夫婦はさておき、障がいがあるないに関わらず相手がいて成立するものです。簡単に言えば、風俗を利用するのは手段の1つです。今は、障がいのある方を対象としていますとインターネットでオープンにしている施設もあるくらいです。あまり大げさに記載するものではないですが、国外でも色々とあります。元恋人や親しい友人など一般の方との性活動をしている方もいらっしゃいます。

性活動の相手を探すというのは本末転倒の議論なので、自身の興味のある趣味活動や社会活動などで出会った方と自然の流れの中で相手は見つかっていくものです。

(2016.1現在)
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